サンジェルマンのナンパ香水師1
南仏のフランス語学校でクラスメートになった外務省の語学研修中の友人が、夏の間は、パリに戻らないから、とサンジェルマンのアパルトマンを貸してくれた。私が夏の間にやることは、2つ。南仏でもサボりまくっていたフランス語を少しでも勉強するのと、秋からの留学先である、オークション会社クリスティーズの学校に手続きしに行くこと。
赤茶色のレンガとクリーム色のペンキに塗られた柱のロンドンの、重い街並みに比べ、白っぽい石造の建物に、落ち着いた灰色がかったブルーの屋根が基本のパリの街並み。整然とした美しさがある。建築家の叔父は、パリの街並みは冷たい、と言って、イギリスに方を好んでいたけど、私は断然こちら。昔から「かわいい」より「きれい」が好き。ちっとも冷たい感じなんてしない。むしろ、整然とした美しさが心地よく、歩いているだけで、幸せな気分!
そのうれしい気分は、知らず知らずに、身体の中から、外に溢れ出ていたよう。
「ボンジュール!」
いきなり話しかけられた。何か用事があるわけでも無さそう。無視、無視。
「マドモワゼル、何しに行くの?」「どこに行くの?」
黙ってると、どんどん話しかけてきて、うっとうしい。
「僕は、ジェラール。香水デザイナーなんだ。」
「それが、何か関係があって?」
と思わず言ってしまったら、
「hahahahaha‼️」
と大きな声で笑われた。びっくりして、思わず足を止めてしまった。