涙のお馬さん

今週のお題「好きなスポーツ」

 

その昔は、日本でも戦争や移動に使われていた馬。明治維新で武士がいなくなってからも、そこそこ馬は存在したけれども、近代化が進み、自動車が出現すると、日本ではあっという間に馬や馬車に乗らなくなってしまったので、乗馬もすっかり遠い世界の出来事になってしまった。

でも、西洋では、今でも身近な生活の中にあるものである。フランスやイギリスでは、騎馬警官が普通にパリやロンドンの街中にいる。アメリカでも、牧場や馬は身近な存在。高校生のときに、アメリカにホームステイをする機会を得た。まだ見ぬホストファミリーに向けたお手紙の中で、どこかの例文に載っていたこともあって、「乗馬がしたい」と書いた。

このプログラムで行くところは、都会のボストン。中西部の牧場ではない。それでも、馬を飼っているファミリーがいて、そこに決まった。お父さんは、なんとトルコからの元留学生。お母さんは、すらっとしてて、ずんぐりした体型のお父さんより背が高く、日本でそんな夫婦を見たことがなかったから、びっくりしてしまった。姉と弟の子どもがいて、姉が同じぐらいの年だった。彼女は、馬の大会でいくつも入賞していて、きれいなリボンの表彰バッジをいくつも飾っていた。

日本より湿度が低いといえど、夏。馬に乗るのは、早朝。早起きして、英会話レッスンが始まる前に一乗り。まだ寒いぐらいの気温。くしゃみと鼻水が出る。その時は、早朝の涼しすぎる低い気温のせいだと思ってた。

だんだん馬に慣れてきて、上手に乗れるようになった。

素敵な乗馬体験で、すっかり馬好きになった私。けれども、日本で、普通の一般家庭にとっては、乗馬は遠い存在。県立の高校に馬術部などあるわけなく、そのままになっていた。大学生になって、馬術部に入部!住んでるところからも大学からも遠いけれども、大学の馬場が、調布市にあった。早朝練習に間に合うよう、まだ寒い中家を出る。馬場について着替え。準備体操、ウォーミングアップで乗馬。くしゃみや鼻水が出るけど、朝寒いからだと思っていた。私大では厩舎の掃除などは専門の人がやったりするけど、国立大学の私達は、自分達で掃除しないといけない。部室は決してきれいじゃない。先輩達は、留年してる人ばかり。なんだかイメージが違って、楽しくなくて、しばらくして辞めてしまった。

それから、大学生としての新生活が忙しいながらも楽しく、家庭教師などのバイトも忙しく、スポーツとしてはスキーにお金を使うので、馬術に時間とお金を割く余裕や関心がなくなった。こうして、ヨーロッパに留学して、公園で乗馬している人達を見るまで、ほとんど心の奥底にしまわれたままだった。

ヨーロッパでは、日本と違って、競馬がおしゃれな上流階級の社交行事だったりする。イギリスのアスコット、パリのエルメス杯などその奇抜なお帽子などのファッションでも有名。また、本当の貴族のスポーツとして、ポロ競技がある。アメリカとは違う、上流階級のもの。そして、シャンティー城を始めとして、馬のショーを行ってるところも多い。ある時、フランス文化の一端を垣間見るということで、馬のショーを見に行った。城の中の競技場は、馬が走る所に藁が敷かれ、砂煙が舞っている。ショーが始まるのを待っていると、くしゃみが立て続けに。涙も出てきて、目がショボショボ。「どうしたんですか?目が真っ赤ですよ!」と言われる頃には、理解していた。アレルギーだ❣️ 藁なのか、馬の毛なのか。過去の乗馬経験から推測できるのは、馬の毛。私は、乗馬できない体質だったのです!なんと残念なことでしょう!あんな気持ちのいい乗馬を、楽しむことができないなんて!ヨーロッパでも、マスクが普通になった今なら、マスクで乗馬に再挑戦できるかも?