サンジェルマンの調香師3

一緒に住み始めたものの、すぐに問題が出てきた。すでに、早期リタイアに近い彼は、週に2、3度ちょっと会社に行くだけで、人生を楽しみたいステージ。かたや私は、大学卒業後の就職はうまくいかず、後がないから、かなり真剣。それに、フランス語がほとんどできない状態で入学してしまったから、復習だけで大変!専門用語満載だから、それは彼がいうような、「フランス人と会話」してるだけでは、全然間に合わないのである。

そして、離婚というか、法的に正確には「別居」という状態になる「元妻」との間にできた娘は、父と母の間を行ったり来たり。元妻は、月に一回生活費をもらいにくる。娘の学校でのことなんて、私には関係がないし、ある意味どうでもいい。少なくとも、「今」は。だけど、娘がいるときは、夕食時、そして夕食後は、そういう話題の「家族会話」に参加しないといけない。大学受験勉強並みに勉強しないと、授業についていけないから、私は食事が終わったら、さっさと勉強しにいきたい。人間、環境が変わることは、大きなストレス。たとえそれが結婚や昇進などプラス方向の変化であっても。ある晩、ディナーを食べ終わり、団欒タイムに入った。また私のわからない学校か友人の話題になっている。聞いていてもわからないし、宿題も気になる。

なので、私だけ先に部屋に戻った。せめて復習をしようと思って。

 

次の日、真剣な顔をした彼に言われた。

「アイム ノット ハッピー エニモア。」

I'm not happy any more. 
もうハッピーじゃない。。。

 

もう続けられない、と。

 

胸がドキドキする。突然の言葉に、悲しみというよりは、衝撃。

 

でも、そう言われて気づいた。

 

 

私もハッピーじゃなかった。。